535 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:47 ID:35Dd5fgq
9/20
手紙の秘密を知る機会に巡り会えたことは、得難い幸運だった。
物書きを生業としていてよかった。
ある日、私のところに「ある重要人物の代理人」と称する人物から連絡が入ったのだ。
∧∧ D
( ゚Д゚)D
_φ ノ_______
/旦/三/ /?@\ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |
|__________|/
536 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:48 ID:35Dd5fgq
10/20
いくつかの条件を承諾すると私は黒塗りの車に乗せられ、とある病院に連れて行かれた。
高級病棟の、とりわけ豪華な部屋のベッドで、その老人は待っていた。
財界ではかなり名を馳せた男だ。
_ _ | |
r'´,,+,,`> | || |
)ノノノ从 ∧∧ | || |
((リ゚ヮ゚ノ (,,゚Д゚) | |
___くl_=:l」⊃__⊂ ⊃______|______.|
ノu.:|l ~| |
UU し`J
537 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:49 ID:35Dd5fgq
11/20
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 君があの手紙について調べていることは知っている。
| ふふ、あれはわしの仕業だよ。 私個人の資材を費やしての酔狂だ。
| ずっと、こっそりやってきた。しかしわしもどうやら先が長くない。
\______ _____________________
∧∧ ____|/_
(,,゚Д゚) /| |(('A`)) |∧
⊂ ⊃ ||, ~~'⌒⌒ヽ~-、
~| | ||\ ' , ` ゙ヽ、
し`J ||\.\|| ̄| ̄| ̄| ̄| ̄||
\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
538 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:50 ID:35Dd5fgq
12/20
|
| ('A`)
/ ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄
きっかけは、こんな出来事だと言う。
彼は若い頃、事業で大失敗をして意気消沈したことがあった。
その時、新聞の尋ね人の欄にこんな言葉を見かけたのだ。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| // | 心配しないで 父・母より
| \ _________
| ( 'A`)__|ノ__
/ ̄ノ( ヘヘ/三/
その宛名は、彼の名前と同じだった。
だが、それはただの偶然だった。彼の父母はもうこの世にいなかったから。
539 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:51 ID:35Dd5fgq
13/20
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| J( 'ー,`)し( 'ー,`)|
O\_____/
o
。(ノA`) カーチャン…
+ ( ヘヘ
しかし、それを見た彼は思わず涙を流した。
天国の両親が、彼を元気づけようとメッセージをくれたように思えたからだ。
彼は、奮起して再出発した。そして、巨億の富にいたる大成功を収めたのだ。
540 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:52 ID:35Dd5fgq
14/20
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| あり余る金を慈善事業に投入するよりも、それを使って皆に
| たった一言の大切な言葉を伝える方が効果があると思った。
| それは、大作家の長編小説よりも価値のあるものだとな。
\______ ___________________
∧∧ ____|/_
(,,゚Д゚) /| |(('A`)) |∧
⊂ ⊃ ||, ~~'⌒⌒ヽ~-、
~| | ||\ ' , ` ゙ヽ、
し`J ||\.\|| ̄| ̄| ̄| ̄| ̄||
\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
彼は、自分が余命幾ばくもないことを知っていたが、
手紙のことは誰にも託さず、今年をもって終了するという。
その後でなら、この話をどこかに発表してもかまわないと言った。
541 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:53 ID:35Dd5fgq
15/20
∧∧
|\(,,゚Д゚)/|
○ \/ ○□=□__
/旦/三/ /?@\./|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
|__________|/
その1週間後、老人が亡くなったことを新聞で知った。
彼の最後の手紙は、その数日後に来るはずだった。
542 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:54 ID:35Dd5fgq
16/20
すさんだ都会で、皆、疲れ果てながら生きている。
今年も、おびただしい数の不幸や不運が、メッセージを待ち望んでいた。
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iiiii--「ii!!!!!!!!!!____;;;=;; ;;;;;;;;;;;;|.[[[[[[[[[[[[[[ i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|三三三三三三三三
543 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:54 ID:35Dd5fgq
17/20
| |/(-_-)\|
| | ∩ ∩ | ∧_∧
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∧_∧ //(ハヽ∂
(,, -_-) …… ( ´∀`) (`∀´*ハ
(∩∩つ □=□─── ( つつ つ□ )
/__ /?@\ 人 Y <_人_ヽ
/ |\/| し (_) (___( _)
 ̄ ̄
+ /■\ /■\ /■\ +
( ´∀`∩(´∀`∩) ( ´∀`) /■\+
+ (( (つ ノ(つ 丿 (つ つ (・∀・`)
ヽ ( ノ ( ヽノ ) ) ) + ⊂⊂ )
(_)し' し(_) (_)_) く く
その文面はわかりきっている。
しかし毎年たくさんの人々がこれで勇気を、友情を、愛情を取り戻してきたのだ。
自殺を思いとどまった人もいる。
特に私は今年で最後になることを知っていたから、なおのこと感慨無量でその日を迎えた。
544 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:55 ID:35Dd5fgq
18/20
∧∧
(゚Д゚,,)
___ つ|}○)__□=□__
/旦 /?@\ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
|__________|/
他の人々と同じように、私も手紙を受け取った。
あの老人は死ぬ間際にどんなことを考えていたのだろうか。
そんなことを思いながら封を開き、白い紙を取り出す。
545 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:57 ID:35Dd5fgq
19/20
∧∧
(゚Д゚;)
__つ□⊂)__□=□__
/旦 | ̄|} /?@\ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
|__________|/
私は自分の目を疑った。
そしてあの老人が本当にやりたかったことを一瞬で理解し、慄然とした。
546 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/05 00:58 ID:35Dd5fgq
20/20
老人の最後のメッセージは例年のものと違っていたのだ。
そこにはこう書いてあった。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
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/  ̄ ̄ ̄ ̄ /_____
/ /ヽ__//
/ お前はもう不要だ / / /
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/ ____ / / /
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ / /
終
564 名前:
◆6666P.Z.IE [sage] 投稿日:2003/09/06 00:10 ID:c9wmtj89
なんか出典を明記してなかったみたいで…すみません
2999年のゲーム・キッズより「誤配メール」でした。
なにぶん経験浅いもんで話の面白さを殺いでしまわないか心配でしたが
どうにかうまく伝わったようでホッとしてます。ありがとうございました。
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