257 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:30:24
ID:VnfnvH5H0 (PC)
6/21
恋人はさる金満家の依頼でイタリアに行ってしまい、娘は1人ぼっちになった
恋人は手紙をよこした
∧[〓] ∧ ∧
( ´ー`) ̄ ☆((^^ヽ☆
\ < γ⌒ヽ /| jl(ー^ )||
\.\_( 〒 )_//ロと )
\  ̄ ̄ ̄ / | | |
∪∪ ̄∪∪ (,__(_)
最初はたびたび、しだいに間遠になり、とうとう途絶えた
258 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:30:51
ID:VnfnvH5H0 (PC)
7/21
きっと事情があるんだわ・・・・娘は恋人が手紙を書けない理由をいくつもこしらえた
希望はいつも裏切られた
幾度も絶望が襲いそのたびに望みを奮い立たせた
∧ ∧
☆ノ^^ハ)☆
ノリ,∩∩)li
(ソ ゝ)
だが真に絶望するときが来た
裕福な求婚者が現れたのである 父は肚を決めた
娘はただちに縁ずくことに決められた
259 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:31:22
ID:VnfnvH5H0 (PC)
8/21
急ぎ足で町の裏通りを抜け人気のない橋に至った
そこはしばしば恋人と黄昏どきを過ごした場所だった
∧ ∧
☆ノ^^ハ)☆
ノリ, - )li
( つと)
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
| |
2人はよく眺めていた
薔薇色の光が輝き薄れついには水面へと消え逝くのを・・・・
260 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:31:48
ID:VnfnvH5H0 (PC)
9/21
青年はフローレンスから帰郷するところだった
手紙はすでに受け取っていた
./V\
( ・-・)
( )
人 Y
し(__)
涙でにじんだ懇願と絶望の手紙を
だがもう愛していなかった
絵のモデルになったフローレンスの若い娘に浮気心を奪われてしまったのだ
もっともその胸中にまことの愛はなかった
261 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:32:18
ID:VnfnvH5H0 (PC)
10/21
金持ちの求婚者が現れたって?いい話じゃないか
結婚するがいいさ そのほうがあの娘にゃいいよ
/V\
( ・ー)
( )
人 Y
し(__)
まぁ僕にとってはなおさらだけど・・・・
262 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:32:53
ID:VnfnvH5H0 (PC)
11/21
青年はスケッチブックを開いた
1郡の人影が目を引いたのだ
∧_∧ ∧_∧
( ´曲`)γ^⌒~`(´⊆` )
( つんハ乂と )
| | | ̄ ̄ ̄ ̄| | |
(_)__) (_(__)
それは葬式ではなかった 会葬者は見えない
だが亡骸が見えた
2人の男がぼろぼろの帆で覆われたぞんざいな戸板を担いでいる
263 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:33:27
ID:VnfnvH5H0 (PC)
12/21
「亡骸みたいだね」
「さようで 1時間ほど前、岸に打ち上げられましてな」
「身投げかい?」
「へえ、若い娘でね えれえ別嬪さんですぜ」
「美男美女と相場が決まっているよ 自殺した人間は
ちょっとスケッチしてみたいんだけど、美人っていう話だから」
/V\ ∧_∧
( ・ー) (´⊆` )
(f‘‘‘‘φ [100と )
|__| | γ^⌒~`⌒ヾ | | |
(_)__)んハ乂从リハゞ (_(__)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
そう言って金をやると、猟師たちは 「仏さんの顔を拝みやしょう、帆布あっしらが取っ払いますから」
「いや、自分でやるよ」
青年は湿った粗末な布を持ち上げた
さて、顔は・・・・
264 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:33:57
ID:VnfnvH5H0 (PC)
13/21
・
・
・
・
・
・
・
・
ようやく、青年はやや落ち着きを取り戻した
あの娘が自殺しようと、僕は僕だ そう考えようとした
./V\
(-・i|!;)
( )
Y 人
(__)J
天分が失せたわけじゃないし、金だってフローレンスで稼いだのがまだ財布に詰まっている
どこへ行こうと思いのまま、自分に命令できるのは自分だけなのだから
265 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:34:22
ID:VnfnvH5H0 (PC)
14/21
そのとき、不意に誰かが、何かが、
背後から首に冷たい腕を巻きつけてきた
;;;;;;;;;;::::::::
./V\;;;:::::::
(i|!・д・);;;:::
:::∩∩;;;;;::::
Y 人;;;;:::::
(__)J;;;:::
青年はやにわにふりむいた 誰もいない
首に巻きついた冷たい腕
はっきりと感じるのに、見えない
__
|==@=|_
( ・∀・) /V\
と ̄`y´ )つ (・-・;)つ
|===,゚,=| r| ⌒|
(__)_) (_し⌒(__)
ほどなく声を聞きつけた夜警が、すわ何事ならんとやってきた
冷たい腕はたちどころに失せた
266 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:34:50
ID:VnfnvH5H0 (PC)
15/21
そんな1件があったあと、青年はコローニュを去った
前と同じ徒歩の旅だが持ち合わせはだんだん乏しくなってきた
行商人の1行に加わったり、道づれになった者には見境なく話しかけた
朝から晩まで、常に誰かといっしょにいるように心がけた
(),/ )::... (ヽ,()
( ) ..,,/ :::|,,( )
ヽ) ,/:: ::/(ノ
ヽ)::: :::(/
時には一人になった
すると決まって現れるのだ
あの冷たい腕が、首の回りに・・・・
267 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:36:02
ID:VnfnvH5H0 (PC)
16/21
ゲルトルートが死んでから月日が流れた
金は底をつき、見る影もなく衰えた
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' .
/V\
( i|!・-)
( )
人 Y
し(__)
,
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
パリの謝肉祭にたどりつくこと、それが青年の望みだった
そこでは絶対に独りになる気遣いはない
あの死者の抱擁を感じることもないだろう
268 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:36:35
ID:VnfnvH5H0 (PC)
17/21
オペラ劇場を見つけた
そこでは仮面舞踏会が催されていた
入場切符を買い、ドミノ仮面を借りるだけの金は残っていた
♪
∧_∧ | ̄ ̄ | ♪
∧∧ ∧∧ X ノ ハヘ X _|___|_
,,(*<X>) (<X>) |゚ノ<X>) (<X> )
(~~~)人i`y'"i) §∪~~~)⊃と <Y>)
/ ヽ |_i_l !!ノ ::::::ヽ | | |
∠__ゝ U`J <____ゝ (__)_)
∧ ∧ ♪
☆ノ^^ハ)☆ /V\
ノリ,<X>)li(<X> ,)
(`介´つと )
く/ i丶ゝ | | |
(,__)_)(_(__)
闇も孤独も去った
人々は憑かれたように叫びながら踊っている
仮装した愛らしい娘が青年の腕にしがみついた
心躍るような気分だった
持ち前の陽気さが蘇ってきた
269 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:37:04
ID:VnfnvH5H0 (PC)
18/21
かよわい仮装の娘は疲れたようだ
肩に置かれたその腕が、鉛よりも重くなった
1人、また1人、ほかの踊り手たちが去っていく
シャンデリアの灯りも、1つずつ消えていった
∧ ∧
/V\☆
(;i|!・-)l|
(ソ と )
| | |(
(_(__))
青年はその顔をまじまじと見た
死んだ魚のような目だった
どこにも光がない
270 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:37:33
ID:VnfnvH5H0 (PC)
19/21
そして、見る見るうちに透き通り、ついにぼんやりした影だけになった
それも消えた
青年だけがただっ広い舞踏会場に独り残された
;;;;;;;;;;::::::::
./V\;;;:::::::
(i|!・-・);;;:::
:::∩∩;;;;;::::
Y 人;;;;:::::
(__)J;:::
首には、あの冷たい腕が巻きついている
もうこの冷たい抱擁は解けない
叫ぼうとした 喉は嗄れ切っている
静寂のなかに響くのは、もう逃れられない死の舞踏を踊る自分の足音だけだった
271 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:37:57
ID:VnfnvH5H0 (PC)
20/21
青年はもう抱擁を解こうとはしなかった
よし、踊るぞ!もう1曲ポルカだ
たとえ倒れて死のうとも・・・・
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:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;ゝ ノ;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::
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:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;; ̄ し'';;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::
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272 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:38:23
ID:VnfnvH5H0 (PC)
21/21
半時間後、警官たちがランプを手に現れた
表玄関の近くで、警官は何かにつまずいた
それは、屍体だった
栄養失調と疲労、さらに脳溢血を起こして死んだ画学生の・・・・
273 名前:
B級シネマ ◆qrSUVPbtek [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 06:39:07
ID:VnfnvH5H0 (PC)
「淑やかな悪夢」
メアリ・E・ブラッドン作 「the cold embrace」
274 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 09:14:21 ID:DK6E309t0 (PC)
(;゚Д゚)コワー
そして>>266の手の表現(゚д゚)ウマー
275 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 17:55:48 ID:aSjRWDig0 (PC)
乙
この人の文章スゲーいいなぁ
276 名前:
( ´∀)・∀),,゚Д)さん [sage] 投稿日:2008/05/17(土) 20:57:26 ID:p0NUV1A10 (PC)
コワイ&良かった。すごく引き込まれました。
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